化ける男


1994.7.28(thu)-7.31(sun)  新宿スペース107


       CAST                     STAFF

河原崎 耕作      岡本 徳彦                作・演出     前田 真之輔 

天童 ユリ       山口 ちえみ        音響       サウンドキャラウェイ

住倉 聖太郎      鈴木 淳一郎        照明       福田 恒子

桜井 京三       福島 龍治         舞台監督     比嘉 正哉 

市之瀬 修五郎     勝俣 喜章                  川井田 照美

角崎 鈴香       大西 智子         スライド     坂本 陽子

蔵元 タケゾー     山内 啓太郎        宣伝美術     アーバンテラス爆弾

市之瀬 シュージ    堀井 祥明               制作       大須賀 あつし

使用人A        武藤 靖将          協力

警察官         横山 秀幸            東放学園音響専門学校

先生          小嶋 実和子           沢口 慶・加藤 龍星

天童・弟(守り神)   前田 真之輔           兼高 豪・小西 ひとみ

                             圭司amdJ    

 


 

        ごあいさつ

 

 先日、新潟で27万円と云う配当がついた当り馬券を、七十才の老人が、見

事に的中させ、1350万円を手に入れたと云う記事を、あるスポーツ新聞で

見かけた。

一着に入ったのは、人気・実力ともに最低の馬で、二着に入ったのも、ブービー

人気の馬であった。

馬にウトイ私が興味ひかれたのは、七十才の老人が、何故そんな馬に託したのか

と云うことだった。

確かに大穴狙いの変わり者ジジイの一言で片づければ、それで終わるのだが・・・。

 しかし、いくら大穴狙いと云っても、もう少し脈のある馬との組み合わせを考

えるのが普通だと思う。

しかも、その老人が、遊びや冗談でないと云う証拠にその老人は、五千円も注ぎ

込んでいる。老人の買ったいくつかの組み合わせの中で、最も高い金額である。

どう考えてもマジである。

 突然、小学校の頃にTVで見た、ヤクルトの名も無きベテラン投手の姿が、私

の頭をよぎった。

試合は中盤。対戦相手の巨人が、ノーアウト二・三塁のチャンスを迎えていた。

ヤクルトにとっては、最大のピンチである。当然のごとく、ヤクルトベンチは、

ピッチャーの交代に動いた。

そして、替わりにマウンドに登ってきたのは、一ケ月前まで、バッティングピッ

チャーをやっていたと云う無名のおっさん投手であった。アンチ巨人であった私

にとって、それは不可解極まりないヤクルトベンチの決断であった。

何分か後に、不愉快な気分になるのを覚悟しながら、固唾をのんで、試合の動向

を見守った・・・・・・。

・・・だが、そんな僕の不安を吹き飛ばすかのように、その無名のおっさんピッ

チャーは、巨人の強力スラッガーたちを次々に仕留めていった。

そのシーズン、無名のおっさんピッチャーは、そこそこの活躍をするのだが、次

のシーズンに再び見ることは、なかった。

 しかし、誰にも見向きもされていなかった凡才が、天才を押さえ込む瞬間が、

そこにあり。

 そして、そんな彼を選んだ人間がいたのである・・・まさに、ワースト人気馬に

託した七十才の老人のように。

 新聞の記事を読みながら、そんなことを考えていたのは、雲一つない晴天の日

のことであった・・・・・・。

前田 真之輔

 


 

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