チャンプルー
1992.1 下北沢駅前劇場 |
ごあいさつ
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先日、私は駅のホームに立っていた。 ふと向かいのホームを見ると、酔っぱらいの中年サラリーマンが1人、気 持よさそうに鼻唄を唄っていた。 そこへ、ぐでんぐでんの別の中年サラリーマンが、1人、現れた。 そしてその男は、鼻唄を唄っているサラリーマンを見て、その唄を一緒に 口ずさみ始めた。 知り合いではないらしい2人があっという間に意気投合し、肩を組み合い 大声で唄い始めた。 その唄を私は聴いたことがないのでよくわからないが、とにかく2人は気 持ちよさそうに声を合わせて唄っていた。 そこへ電車がホームへ入ってきた。 そしてドアが開くと、まるで条件反射のように2人は、スーッと別々のド アから入り、なぜか離れたシートに座り、何もなかったように、1人は小 説を読み、1人はボーッと外を見ていた。 そして2人を乗せた電車は、事務的な鉄の摩擦音を残し、次の駅へと去っ ていった。 その時なんとなく「東京」を感じた…
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前田 真之輔
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